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第3回 窓装飾専門店 彩雅 ●中嶋透氏

三宅:さて中嶋さん。もともとスミノエの販売会社にお勤めでしたよね。今はこうやってカーテンショップのオーナーをやってらっしゃる、そもそものきっかけはなんだったんでしょうか。

中嶋:父が製材業で材木を扱っていたんです、だからいずれは自分も田舎に帰って商売を継ぐんだろうなぐらいに漠然とした感覚は最初からあったんです。そういうつもりで学校も後継者育成コースでしたから。

三宅: へぇ。

中嶋:実は先日・・・父の命日でした、私が20歳ぐらいのころに事故で。まぁ、で、就職ってことで学校から勧められたところを面接受けたらポンポンと決まった。スミノエなんとかなんて知らないとか思いつつ(笑)景気も悪くなかったですから割と就職は苦労しませんでしたね。

三宅:あら、じゃぁ、カーテンが好きで好きでたまらなくてこの業界、っていうわけでもないのですね。

中嶋: いや、いや、もちろん、インテリアも好きは好きでしたよ。でも学生時代に思い描くインテリアというのは、東急ハンズの、あの、雑貨の世界。でも、スミノエ入ったら全然違うし、家具もないし、みたいな(笑)でも景気がいいから常に忙しい感じでやってましたね。

(当時集めていたという、インテリアの切り抜き集を見せてくれました→

そういえば私も同じことやってました!
インテリア好きの人はみな一度は通る道なのでしょうね~)

中嶋:一番きつかったのは、あれかなぁ、当時はまだ営業車を持たされてなくてね。カーテン見本帳2冊とロールカーペットの見本帳を持って打合せ、厚木だったかな、駅から片道徒歩20分!・・・とかね、あと、当時は携帯電話なんてのも持ってなかったでしょ、新築の現場とか住所わかんないし全然たどり着けなかったりとか(笑)まぁいろいろありましたよね~。

三宅:今じゃコインパーキングから運び出すのもラクに出来るようにって、車の荷台に折り畳み自転車を積み込んでおくという用意周到なカーテン屋さんになってるわけですね。

中嶋:取引先とかによくいるじゃないですか、一人や二人。儲け話なんかが好きな人って。

三宅:いくら儲かってんの?とか、独立しちゃえよとか、言ってくる人?

中嶋:そうそうそう。家具屋さんだったんですけどね一人そういう人がいてね。「取引先に太いパイプがあるから仕事はいくらでも回せるよ。紹介してあげるからカーテン屋ですっていって挨拶しちゃいなよ」って言ってくれる人がいて、まぁ、かつがれたんです。

三宅:なるほど、そういうきっかけがあったんですね。

中嶋:当時、店なんか持たないで「見本帳」だけで商売やっているカーテン屋さんってたくさんあったので自分もそんな形で、お、いきなりカーテン屋として独立が出来んじゃないかっていうのがあって。

三宅:へぇ、なるほど。

中嶋:じゃぁ会社を作ろうってなったけど、いざフタをあけてみたら全然普通に社員待遇。あれ?って。仕事も全然回してくれなくてゼロですよ。太いパイプがあるっていってたけど全くない、みたいな。

三宅:透明なパイプだったか(笑)

中嶋:それで半年ぐらいでこれはやめさせてもらおうってお願いして、だけどサラリーマンやめたばっかりでまた別の会社を作るのもかっこ悪いなと思いましてね。有限にしてたもんで、この会社の権利買い取らせてくださいって百万単位のお金払って、それから自分が社長になって、今に至っているわけです。

三宅:その時に引き継いだ会社が「彩雅(サイガ)」という名前だったんですね。

中嶋:そうです。

三宅:中嶋さんのお母様ってどんな人なんですか?

中嶋:母ですか?もう亡くなっちゃったんですけど、わりとおとなしいタイプ・・・なんだけど、人が集まるところに出ていくのは嫌いじゃないっていう。

三宅:中嶋さんはお母様に性格が似ているんでしょうか。

中嶋:そう・・・・かもしれません。

三宅:私が思う中嶋さんは、物静かで冷静。だけど物事をちょっとななめから観察している分析屋さんっていうイメージがあって、ある意味ちょっと怖いという(笑)そういう印象を私はもってるんです。

中嶋:あぁそうなんですか(笑)ななめから見てるっていうのは当たっていると思います。どこかポイントとなるところを抑えておくっていうスタンスですよね。例えばラジオやテレビ、「新刊だしました~」なんていうゲストが自分の本の宣伝に来たとして、一行だけでも読んでおいてそこを指摘してあげると喜ぶでしょ。わぁこんなに忙しいタレントさんでも自分の本を読んでくれたんだって思われるじゃないですか。

三宅:あぁ、そうか。中嶋さんはいろんな人のブログやfacebookにすごく気の利いたコメントを入れていかれるので私は「コメント職人」と勝手に呼んでいるんですけれど・・・なるほど、本当はみんなのブログを全部は読んでいないんだけどね、っていう暴露ってことですね(笑)

中嶋:ち、ち、ち、違いますよ。ちゃんと読んでますよ、読んでます・・・(笑)

三宅:facebookでいえば、中嶋さんはよく野球の話題を書かれているので、野球が好きなんだろうなというのがわかるんですが、生まれ変わったら・・・やっぱり野球選手とかになりたいですか?

中嶋: あ、いや~・・・実は・・・そうでもなくて(苦笑)野球選手は・・・・ない、ですね。

三宅:あら、意外。では、どんな職業につきたいですか?やっぱりカーテン屋さんやりたい?

中嶋:自分、けっこうカーテン詳しいほうだと思っていたんですよ、これでも。だけど、ネットの世界、オフ会なんかでいろんなつながりが出来たでしょ、自分なんて全然でしたって思い知らされましたよ。

三宅:上には上がいますから。

中嶋:そう。建築業界って集まると急にキャバクラ行こうみたいな話になるとか聞いたりしますけれど、カーテン屋さんの集まりって基本、カーテンの話ばーっかりしてる。酒飲みながらずっと。キャバクラとか誰も行かない。

三宅:それが最高に楽しい、っていう人たち(笑)

中嶋:全国規模でいえば、要尺計算もできないでやってるカーテン屋さんってたくさんいるんですよ。その反面でマニアックな志の高いカーテン屋さんもたくさんいるっていうね。だけど・・・そうだなぁ、生まれ変わったらまたカーテン屋さんでもいいと思いますけど「値切られない」商売がしたいと思いますよ。
りかさん、値切られたりしませんか?自分は、値切られたくないですよね、生まれ変わったら。

三宅:よっぽど値切られてるんですか!(笑)

中嶋:大工さんとか・・・作り手側になりたかったですね。今はカーテンを売ってるだけで自分が縫製をしているわけでもないでしょ。自分で縫えたら楽しいだろうなって思いますよ。そうだな、生まれ変わるとしたら手先が器用で、腕のいい、作り手、になりたいですね。「腕のいい」が重要ですけど(笑)そして・・・・値切られたくない!

三宅:(笑)

中嶋:自分に自信がない、というのが基本として根底にあるんです。

三宅:自信がない・・・んですか?

中嶋:そう…ですね。口だけで言いくるめることが出来ないっていうか。
例えば、もし自分がアパートに住んでいたとしたらもう、自信がない。
お客様にカーテン勧めてあーだこーだやったときに「あなたはどんなお宅に住んでらっしゃるの?」なんて聞かれようものなら、自分はアパートなんですけど・・・ってもう、そこで、説得力がなくなっちゃうんじゃねぇか、とか。

三宅:自分が経験や体験したこと以外のこと、やったことのないことについては口先だけのトークが出来ない。

中嶋:お客様の家に犬がいても「ヨーシヨシヨシ!」とか出来ない。だから犬、飼ってみたんです。自分が飼ってたら「ヨーシヨシヨシ」に説得力が出るんじゃないかって。だけどなんかやっぱりできないですよね。りかさん、出来ます?

三宅:あ、私も・・・・サラっとです。

中嶋:だと思いました。りかさんもたぶんそういうタイプですよね。

三宅:正直・・・なんでしょうかね、中嶋さんは。

中嶋:りかさん、誰でもいいんですけど、芸能人とかの熱狂的なファンの人います?

三宅:・・・・???

中嶋:例えばその芸能人が亡くなって、築地本願寺での告別式とか霊柩車で運ばれていくときにその芸能人の名前を叫べるか、って話です。声かけられますか?

三宅:いや、絶対無理です。

中嶋:でしょ!無理でしょ。でも、かける人っているじゃないですか。

三宅:オザキー!!!!!・・・・・って?

中嶋:そう(笑)尾崎豊のファンで、いっぱいファンがいる中で
オザキー!って俺なんかの程度でオザキー!って声かけていいのだろうか。
もっとすごいファンじゃないと声かけちゃだめなんじゃないかって。

三宅:・・・・わかる。

中嶋:自分に自信がないっていうのはそういうことなんですよ。カーテンを売るときのスタンスもそう。自分は全部受けるリフォーム屋さんでもないので、窓があって、家具があって、壁紙があって、照明があって・・・っていうインテリアの世界の中で、カーテン屋が「こんなのはどうでしょうか!」って全面に出てしまっていいのだろうかっていうね。

三宅:自分がメインではないのだ、っていう。私、インテリアコーディネーターやってますけれど、同業の中には講師をしたり、メディアに出たり、っていう先頭切って全面にでて活躍している方がたくさんいる。けれど、私はそういうタイプじゃない。やりたいとも思わない。その路線ではないなっていう。

中嶋:言い方アレですけれど・・・・りかさんも、私も、この時代じゃなければ世に出てこなかった部類だと思うんですよね。

三宅:確かに。普段の生活の中で、強烈なオーラを放ち、人を惹きつけていくタイプじゃない。

中嶋:たまたまマニアックな人の目について拾ってもらえたり、ちょっと気の利いたコメント、独自の目線で発信することで何人かは共感してくれる人がいて、ネットという世界があったからちょっと反響があったり、っていう。

三宅:オザキー!と叫ばず、心の中で静かに手を合わせている。

中嶋:この業界で言えばね、ヒデキさん(※1)がまさに、先頭切ってオザキー!って叫べる人ですよ。

三宅:まさに!叫んでる、叫んでる!・・・話変わりますけど、中嶋さんは、えっと・・・じゃぁ、愛してるとか奥さんに言わないようなタイプですかね。どこで知り合ったんですか。

中嶋:上野。

三宅:上野?・・・・・ナンパですか?

中嶋:まぁ・・・そんなような。いや、声かけたのは自分じゃなくて一緒にいた奴で・・・とか・・(いろいろ言い訳)

三宅:いつもいい匂いしてますよね。香水つけてます?

中嶋:奥さんがプレゼントしてくれたのをつけてます。夫婦は仲良いってよく言われます。奥さんには「ノリが悪い」とかって怒られてますけど。

三宅:何か新しく始めてみたいことはありますか。

中嶋:ちょっと前に、お金かけて広告を出してみたんですけれど。反響・・・ゼロでした。

三宅:ゼロ!

中嶋:そう、ゼロ。

三宅:私も昔「インテリアコーディネーター名鑑」という本に掲載されたんですけれど同じく反響はゼロでした。

中嶋:そんなもんですよね〰。あとはまぁ、スポーツバーとかやってみたいと思いますけれど。

三宅:わぁ、いいじゃないですか。

中嶋:でも、ユニフォームを飾ってみんなに見せたいってだけのことで、実際、スポーツバーって、酒飲んでる人間ってうるさいじゃないですか、基本。うるさいのは嫌だな、って考えるとスポーツバーも、やっぱり、いっか、とか。

三宅:わがままだなぁ。カーテンショップの「彩雅」は、将来どういうふうにしたいのですか。お子さんに継がせたりとか・・・そういう思いはありますか。

中嶋:それはないです。全然ないです。

三宅:今は個人住宅、公共施設・・・どっちがメインのお仕事ですか?

中嶋:圧倒的に個人邸です。老人ケアハウス、老人ホーム系は上飾り(※2)が求められたりするのでそっち系はこれから売り込んでいきたいと思ってます。

三宅:デザイン性の高いもの?

中嶋:いや・・・・。志を高く、だんだん求めていくと、人間って、基本からずれていくじゃないですか。
芸術の域っていうか。でもそれってこちらのエゴかもしれないじゃないかって思うんですよ。
お客さんってそこまで求めてなかったりするじゃないですか。
さっき言った、ヒデキさんのとこにいくお客さんはそれを求めていくのかもしれないけれど、自分のところにくるお客さんってそこは求めていないだろうって。

例えばカーテンの裾って、寸法ぴったりが美しいんですよ。
ひきずった裾(※3)って・・・って思いますけど、ひきずったほうがラクですけどね、作るほうは。
でも、ひきずったほうがオシャレよね、芸術的よねって奥さんと盛り上がったところで
実際他の人が家に遊びに来たら「やだ、カーテンの裾、寸法あってないじゃない、変よこれ」って言われて、そこでハっと目がさめたりしないのかなとか余計な心配、思っちゃうんですよね。

三宅:なるほどねぇ。店舗数を増やしたいとか思いますか?

中嶋:どんどん大きくなりたいよな?と人に聞かれたことがあっていや、そういう感じにはなりたくないですって言ったら「夢のない男だ」って言われたんだけど(笑)地域のインテリアショップがニトリやケユカになるわけじゃないんですよ。そば屋が企業展開してファミレスになるわけじゃない。あれはもう、異業種の世界です。そば屋なんだけれど、実はすごくカレーもおいしい、かつ丼も出来る。地域一番のそば屋、そういう感じに自分は目指してますよね。

三宅:「彩雅」に足りないものがあるとすればなんだと思いますか?スタッフ?時間?何?

中嶋:強引さ!!

三宅:押しの弱いカーテン屋さん?

中嶋:そう。

三宅:なんだ。私と同じじゃないですか。オザキーって叫ばなきゃ。

中嶋:で。値切られたくはない。

三宅:(笑)

※1「ヒデキさん」
大阪でDECORATORSというカーテンショップを経営している西垣ヒデキ氏のこと。独創的なデザインを売りに数々の賞を総ナメしていく、業界では有名な、金髪の、ぶっ飛んだお兄様。発言の影響力が高く、注目を集めている。

※2「上飾り」
バランスともいう。カーテンの上の部分に装飾的につけるもの。

※3「ひきずった裾」
カーテンは床すれすれのぴったりのサイズで作るのが一般的ですが、デザイン上、わざと長く作って引きずらせることがある。クラシカルなインテリアで表現することが多い。

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中嶋透(ナカシマ トオル)氏 
窓装飾専門店 彩雅 代表

クロスポイントのコーナーに呼んでもらえて、インタビューを受けている夢を見ました。だからもう、夢の中でしゃべりつくした感があります。リハーサル済みでした。
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<編集後記>
写真を撮らせてくださいとお願いしたら、ゴソゴソと店の奥から何かを引っ張り出してきた中嶋氏。
なになに?と思ったら、店のロゴマークびっしりつまったボード。
これをバックに撮りましょう!って・・・まるでスポーツ関係のインタビューでよく見る、スポンサーがいっぱい列挙されているっていうこれ、私、超ウケました。
(それが上の画像です)

中嶋氏は、ちょっとヒネった小細工を仕込んでくる人だ。
広告、名刺、チラシ・・・何かキャッチーなことをしたがる。
たくさんをしゃべる人ではない。だからこそ、その短い言葉の中に
凝縮したアピールを仕掛けてくる・・・つまり、きっと、
実はとてもめだちたがり屋なのではないだろうか。
何かをひそかに・・・・狙っている人なのだ。

2013.12 カーテンショップ「彩雅」店内にて

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