JAPANTEX2018 「モリスとミュシャの邂逅」ブースコンセプトストーリー(30分セミナー)の原稿全文
2018.11.23 Fri.
(スピーカーから音声)
泥棒だ!
いちご泥棒!
泥棒泥棒!
つかまえろ!
警察!
警察に電話して!!
(電話のベルが鳴る音)
(セリフ朗読ご協力、K3君和田さん&リンテックサインシステム村岡さん)
はい、こちらモリス警察、タイムパトロール課です!
はっ、いちご泥棒が現れたんですか!
そちらの年号はいつでしょうか?
2145年ですね・・イチゴ泥棒のやつめ、そんな未来にまで・・・!
はい、目撃した場所を詳しくお知らせください。
森、ですか、はい、世界のかなたの森、ですね。
そこで目撃したと…え、違う?
その森の奥を500メートルほど進んだところ、ですね、はい、
あ、じゃなくて?そのまた先にある交差点を右に100メートルほど離れて?
斜め45度にしばらくすすんだところにある? ローソンの
・・先の・・・・えぇ、ありますね、大きな栗の木の
大きな木の栗の
上で。
上で?!下じゃなくて、
えぇ・・・・・・・ちょちょちょ、あのすいません、わかんなくなっちゃったので
グーグルマップであとでメールいれてもらえますか。
えぇすみませんね。
2145年の、そこでイチゴ泥棒が目撃されたということですね。
はい、現場に急行させます。
通報ありがとうございました!
(寸劇終了)
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はい、というわけで。(会場失笑)
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皆さんこんにちは。
ウィリアム・モリス、という人をご存知でしょうか。
聞いたことある?聞いたことない。
モリスという名前は知らなかったけど、この柄は見た事あるなぁとか。
あ、実家にこんな柄のクッションカバーが置いてあったぞ?とか?
ウィリアム・モリス、というのは1834年にイギリスに産まれた、まぁ、デザイナーさんでして、
生きていたら今年で184歳の人です。
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ウィリアム・モリスは、数々の素敵なデザインを残しています。
その多くは、自然のものからヒントを得て、
生い茂る葉っぱだったり、たわわに実る木の実だったり。
中でも、例えば有名なウィローボウ、つまり柳、というシリーズ。
100年以上前のデザインですが、いまでも世界中で愛されています。
ウィリアムモリスのデザインは、現在でも壁紙として、カーテンとして、
あるいはクッションとして、 あるいはノートになっていたり、カバンになっていたりと、
私たちの暮らしの中に溶け込んでいます。
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なかでも、この「いちご泥棒」というシリーズのデザインは
ネーミングもキャッチーだし、
描かれている鳥がなんともいえず可愛らしい。
私の大好きなシリーズのひとつなのですが、
今回「モリスとミュシャの邂逅」というブースを設営するにあたり、
数あるデザインの中からどのシリーズを用いようかなと考えたときに
この「いちご泥棒」がいいんじゃないかなーと思いまして、
主役にひっぱりだしてみることにしました。
あまり知られていないマニアックなほうのモリスを使おうか?ですとか、
ピュアモリスというモノトーン調のシックなシリーズを使おうかということも考えましたが
モリスといえばやはりこっちかなと。
生い茂る植物、たわわに実る果実、
深い色のグリーンの美しい色合い。
変化球じゃなくて直球勝負でいくことにしたんです。
松田聖子で言うなら「着物ビート」じゃなくて、
やっぱり「赤いスイートピー」でしょう!というわけです。
あ、わかりにくいですか?
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ウィリアムモリスのブースは
「モリス警察タイムパトロール課」という架空の団体を想定し、
展開することにしました。
現在、過去、未来と時空を超えて
「いちご泥棒」を追いかけ続けているという
ルパン三世と銭形警部のようなイメージで、
ブースはその警察署のオフィス、という設定にしています。
いわゆる本当の警察署内というのはもっと事務的で無機質であると思いますが、
ここは、タイムパトロール課という少しSFの要素を取り入れていますので、
非現実的でファンタジーな空間を目指しました。
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ミュシャのほうは、
広告代理店のオフィス、という設定で空間をコーディネートしています。
世紀の大泥棒、イチゴ泥棒を捕まえるために、
モリス警察から「指名手配のチラシを製作してほしい」と依頼をもらっている会社、という設定です。
モリスが、警察署。
ミュシャが、広告代理店のオフィス。
両者が接点を持っているのだというフィクションの世界をつくりあげて
「モリスとミュシャの邂逅」のブースはできています。
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アルフォンス・ミュシャは、グラフィックデザイナーさんです。
シャンパンのパッケージや、雑誌の挿絵など、
商業広告の世界で活躍をしていましたので、
広告代理店のオフィスという設定でブースを作っているのはあながち突拍子もない話でもありません。
ウィリアムモリスと同じくもうこの世には存在していませんが、
生きていたら、158歳ですね。
・・・同級生、いらっしゃいますか?
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ミュシャといえば、女性像がとても印象深いデザインだと思いますが、
人の顔をそのままインテリアコーディネートにとり入れるのって、
実はちょっと難しいなぁと思っていました。
ホテルのロビーやレストランの内装としては素敵ですが
自宅にこう・・・・顔がデーンと、例えば壁紙として貼られていると、
世界観が限定されちゃうと思いませんか。
「モリスとミュシャの邂逅」というテーマを与えられてブースづくりを任されたのはいいのですが
ミュシャのエリアをどうしようかと悩みました。
女性の顔をモチーフに取り入れたら、
わかりやすくミュシャのコーナーにはなりますが、
それ以上の広がりが難しいなと思ったからです。
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ミュシャ、と画像検索すると、
こんな感じでパソコンで見えました。
ミュシャがデザインした作品がズラーっとまぁ並んでいるわけですが
女性像、長い髪、草花のモチーフ、といろいろなアイテムがありますけれど総じて、
印象に残るものだなんだろうか、
ミュシャといえばなんだろうか、
と考えていたら、この、色彩感覚なんじゃないかなぁ、というところにいきつきました。
なんともいえない、全体的にオレンジがかった、アンバーな色調。
「モリスとミュシャの邂逅」ミュシャ側のブースは、
色、カラーコーディネートにこだわって私なりのミュシャの世界をつくることにしました。
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ここにご覧いただいていますのが、
プランニングするにあたり一番最初に描いたスケッチパースです。
「モリスとミュシャの邂逅」というテーマを考え、
ブースを取りまとめている総監督はインテリア文化研究所の本田代表なのですが、
その本田代表にプレゼンするためにお見せしたものがこのスケッチでした。
モリスのところは警察署という想定にしたいと思います、
森の中に迷い込んだようなファンタジーな空間を考えています、
ミュシャのほうは、広告代理店という想定にしたいと思います、
カラーコーディネートにこだわって展開しようと思います、
ざっくりこんなスケッチをかいたのですがいかがでしょうか、と
このスケッチをお見せしながら方向性のご提案をさしあげたものですが、
一切の修正が入ることなく、
そのままやっていいよというゴーサインをいただきましたので
この絵が、あちらにみえていますブースになるよう
打合せを重ねて、実際の空間にしていった、ということです。
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例えば、モリスのブースには、ウィリアムモリスの壁紙が貼られています。
こちらはデジタルプリントではありません。
「いちご泥棒」でもありません。
「ブラックソーン」という名前の壁紙です。
リリカラ様にご協賛をいただきました。
大変美しく質感があり、夢の中に出てくるような生命の躍動を感じるデザインです。
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こちらは、不思議な形をした、本棚です。
ファンタジーな印象の空間をつくるため、
バーチャルとリアルの中間にあるようなものをとトミ企画様に製作していただきました。
不安定に積み上げられた石のようなイメージです。
モルタル造形、というジャンルのものです。
これもデジタルプリントではありませんが、
「モリスとミュシャの邂逅」のブースづくりに欠かせなかった 重要なアイテムのひとつとなっています。
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それから、
このブースの主役「いちご泥棒」という名前がつけられたデザイン。
いちごを加えたかわいらしい鳥がもチーフになっています。
美しいファブリックなのですが、
ここから鳥の柄の部分だけ全部切り取って綿を詰めて縫いまして、
立体的なお人形さんにしました。
イチゴ泥棒を捕まえたぞ!というわけで牢屋にみたてたおりに入れて、
手錠をかけてぶら下げています。
LEDでぼんやりと光らせているのが、それです。
48匹いますので、AKBじゃないですが、
みなさんの推しメンを見つけてみてください。
モリスのほうはそんなブースになっています。
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ミュシャのほうは、広告代理店です。
オレンジ、黄色、グリーン。
ミュシャのデザインに使われている色を抜き出してブースづくりに反映させました。
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例えばデスクのところ。
10ミリ間隔にビスを打ちまくりまして毛糸をぐるぐると這わせて文字を浮き上がらせています。
この毛糸の色は、
ミュシャのデザインで使っている色を抜き出しているというわけです。
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例えばこれは、
無地のリリカラさんの壁紙ですが、
細く割いて、横貼りをしまして、
さきっちょをくるくるっと巻いてとめてあります。
マスキングテープと間違えられがちなのですがこれは壁紙です。
これも、ミュシャの色を取り出した、というブースデザインでした。
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皆さまのお手元に「モリスとミュシャの邂逅」というB5版のリーフレットをお配りしています。
設営にあたりたくさんのご協賛とご協力をいただきました。
リーフレットには企業様のクレジットが記載されています。
デジタルプリントについて、
あるいは展示ブース内のものにつきまして何かご入用がありましたら
こちらの企業様をお尋ねになっていただければと思います。
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さて。
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自己紹介が遅れました。
わたしは三宅利佳と申します。
インテリアコーディネーターです。
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埼玉の大宮に事務所を構えています。
これが私のオフィスです。
家賃7万5千円です。
個人事業で、フリーランスでひとりでやっていて16年目になります。
主に、個人邸、つまりマンションとか戸建とか、
そういう一般のお客さまの、
リビングだの寝室だの子供部屋だのっていうお部屋を整えさせていただく、というお仕事をしています。
(以下、自己紹介を少しさせていただきました)
(ここは割愛いたします)
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ここはデジタルプリントのエリアです。
みなさまは、施工の職人さんでしょうか、
インテリアコーディネーターさんでしょうか、学生さんでしょうか。
あるいは企業の方でしょうか。
ここに足を止めてくださいましたのは、
なんらかのデジタルプリントの関係者か、
もしくはデジタルプリントに興味を持ったくださっているかたなのではと思います。
私自身は、実は、デジタルプリントを知りませんでして
このたびの「モリスとミュシャの邂逅」というブースづくりに携わらせていただいたのをきっかけに、
はじめてデジタルプリントと直接向き合うことになりました。
オンデマンド印刷?オフセット印刷?グラビア印刷?デジタルプリント?
何がなんで、どれがどうで、違いはなんだ、というようなことも
まったく知らなかったのですが、今回とてもいい勉強になりましたし、
個人邸の住宅専門にしている私みたいなインテリアコーディネーターには関係ない分野だなーなんて
いままではデジタルプリントのことをちょっと他人事みたいに思っていたのですが
それは単なる思い込みにすぎなくて
むしろ、なぜいままでこの世界を意識していなかったのだろうかと悔やんでいるところです。
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例えば、ミュシャのデザイン使って今回カットパイルカーペットに印刷しています。
ミュシャのデザインは、独特の淡い色で柔らかくグラデーションをなしていく花びらですとか、
なめらかな色の移り変わり、色彩がとてもポイントで、重要です。
紙ならいざ知らず、それをカーペットにどれだけの精度で再現できるのかと、
デジタルプリントの技術が試されるところですが
これは、CJ800という機械を使って出力しています。
CJ400でも出来るんじゃないかしら?と疑って、山本産業株式会社さんに質問をしてみましたが
三宅さん、ここまでの表現はCJ800じゃないと出せないよ、と言われました。
ので、間違いなく、すごい技術なんだろうなと思います。
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それから例えば、このブースの背面壁、
今回ドピンクで仕上げたのですが
これも、デジタルプリントの壁紙で出来ています。
私はまぁ、インテリアコーディネーターなのでパソコンのスキルはあまり高くないんですね。
普段いじっているものといえば、見積もりをつくるためのエクセルか、
プレゼン資料を作るためのパワーポイント、ぐらいなんです。
あ、あと、図面を書くのでCADは、いじれます。
それで、デジタルプリントのデータを自分で作れる知識がないんですね。
イラストレーターとか?そういうやつでしょうか?
ですので、今回はパワーポイントでこんなふうにして印刷の依頼をいたしました。
私の渡したこのラフな資料を基に、
ちゃんとデータにして作っていただけたのはとても便利とでもいいましょうか
あ、なんだ、難しく考えなくてよかったんだ!と非常にデジタルプリントを身近に感じられた瞬間でした。
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デジタルプリントは、
商業施設、公共施設、ホテルやレストラン、
そういったオフィシャルな空間に使われていて
一般の住宅のインテリアにはあまり関係のない話かな、なんて思わないでくださいね。
本当に、私たちインテリアコーディネーターが日ごろ抱えているリアルな住宅の現場にも使える素晴らしい技術だと感じています。
なぜならば。
今までの印刷方法だと、
例えばオリジナルのデータを作って壁紙にしたいわと思ったら最低でも3000メートルから作らないといけないんです。
子供部屋のこの壁面に、子供がかいた絵を取り込んだデザインの壁紙にでもして貼りたいな、とか
デザインをやっている学生さんとかが、自分の作品を出力してなんて思っても3000メートル発注しないといけない。
この壁に貼るために3キロの長さの壁紙を発注・・・・ちょっと非現実的です。
でもデジタルプリントの技術なら、1メートルから作ってもらえるんです。
「モリスとミュシャの邂逅」は、
もちろんそのすべての商材がそうではありませんが、
デジタルプリント技術にたよった多くの商材でブースが成り立っています。
「モリスとミュシャの邂逅」の、ブースデザインのご説明はこれで終了でございます。
ブース内は、写真を撮っていただいてかまいません。
フェイスブックやツイッター、インスタグラムやブログなどで話題にしていただき拡散していただければ嬉しく思います。
それでは、皆さま、どうぞひきつづき、ジャパンテックス2018、デジタルプリントエリアをお楽しみください。
ありがとうございました。
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以上が30分セミナーの全容でございます。
ありがとうございました。
最後にもうひとつだけ。
special thanksは、
大阪にお住まいのインテリアコーディネーター
律子さん。
このいちご泥棒を1羽1羽、縫ってくださいました。
ご多忙の中、
このような作業をお引き受けいただき、というか
自ら名乗り出て「代行しますよ!」と言ってくださり
本当に感謝です。
律子さんには感謝の気持ちをお送りしました。
鍋ごと食べられるケーキ。
特別な人にだけお送りしています♪
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