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【調査レポート】インテリアコーディネーターに部屋の相談をするといったいいくらなのか? インテリアコーディネーター料の相場についての調査報告

2021.2.28 Sun.

【はじめに】

日本には、58,168人の『インテリアコーディネーター』資格保有者がいる。
(2020.8現在/インテリア産業協会データ)

インテリアコーディネートの仕事は、この資格がないと行えないものではないため
『インテリアコーディネーター』の資格を持たずしてインテリアの業務に携わっている者もいるが、
一定の知識があることを証明できるスキル目安になり、
企業もその存在を認め、人材として求められていることからも、
多くの人が『インテリアコーディネーター』資格を取得して就業しているのが実情である。

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『インテリアコーディネーター』と『インテリアデザイナー』に明確な線引きはなく
両者の仕事はお互いにクロスしていることもあるので混同されがちだが、
商業施設・店舗内装など、建築に寄った内装デザインをするのが『インテリアデザイナー』、
住宅やモデルルームなどにおいてソフトファニシング(カーテンや家具)に寄った内装デザインをするのが
『インテリアコーディネーター』と認識しておけば、目安としては良いだろう。

『インテリアコーディネーター』になった彼ら・彼女らは、
主に住宅を主戦場とした市場で働いている。
インテリアコーディネートの仕事はカウンセリング、アドバイザーのような役割を担う。
そのため、相談にのった対価としての報酬(フィー)がわかりにくくなっており、
また、『インテリアコーディネーター』の当事者たちでさえ
その価格設定については最適解を求めて日々試行錯誤している者が多い。

【インテリアコーディネート料についての聞き取り調査】

インテリアコーディネート料については、
インテリアコーディネーター協会が示すフィーのガイドラインが存在する。
しかし、実際はどうなのだろうか?
彼ら・彼女らはガイドラインの通りの価格設定にしているのだろうか?
現場で働くリアルな実情を知るため、聞き取り調査を行うことにした。

調査の対象としたのは
「三宅利佳オンラインサロン・フリーランスのインテリアコーディネーター研究室」に所属している
会員135名(2021.2.28現在)にランダムに抽出して質問をし、
60名より回答を得たものを集計した。

以下の項目にわけて考察していく。

1・一般と業界内に生まれている認識の差
2・フィーがわかりにくくなっている要因
3・集計結果/コーディネート料はいくらCASE1
4・集計結果/コーディネート料はいくらCASE2
5・価格設定方法について
6・コーディネート料に関する課題
7・おわりに

【一般と業界内にうまれている認識の差】

この聞き取り調査は、オンラインサロンの会員を対象に行っている。
オンラインサロンの会員とは、インテリアの仕事に従事している者あるいは
従事はしていないがインテリアになんらかの興味を持っている者(部屋をきれいにしたいという願望がある、とか
いつかインテリアコーディネーターになりたいという願望がある、など)なので、
世間一般の平均よりはインテリア感度が高く、インテリアにおいての理解度も高い人たちだろうと思われる。
その中で、インテリアコーディネートの仕事の従事していない人達に対し、

インテリアコーディネーターに家の相談をするといったいいくらぐらいするのか
イメージしているコーディネート料はどれくらいか?
これくらいなんじゃないの?という肌感覚を教えてください
 
という質問をした結果がこの表である。

最も多かった回答が、5万~10万ぐらいではないかということだった。
質問が漠然としていたので、回答する側もちょっと困惑していた面がある。
メール相談みたいな(簡単な)内容のインテリアアドバイスなら1万ぐらいが妥当ではないかという意見があり、
一方で内装工事も含み現場の監理やショールーム同行、プレゼン資料も作るようなアドバイスをしてくれるのなら
10万ぐらいするんじゃないだろうか?という意見もあり、つまり、
「コーディネート内容によって金額が変わる」と考えられているのがわかる。

そして、多くの人は実際のところコーディネート内容がよくわからない、のである。

インテリアコーディネートを探すとさまざまな形態のサービスがみつかる。
お部屋のインテリアアドバイス(メールやビデオチャットなど)はもっとも手軽で低価格なサービスだ。
『ココナラ』というスキルマーケットには
家具の配置アドバイスします、CG製作してあなたの部屋のインテリアアドバイスをします、と謳った
インテリアコーディネートサービスが5,000円から30,000円くらいの価格帯で出回り、
駆け出しのインテリアコーディネーターが経験を積む場として賑わっている。
また、『ハローインテリア』はLINEで手軽に相談できるサービスを考え、
相談料は1部屋3万円代という価格帯で事業を展開している。

そういったお手頃な、主に家具の購入アドバイスにとどまるインテリアコーディネートサービスがある一方で、
家を建てる時に1年がかりでつきっきりになって相談にのる内装のアドバイスや
リノベーション時の内装デザイン、造作家具プランや、図面をひいたり、パースを描いたり、
ショールームへ同行案内したりするサービスも、
すべてひっくるめて同じインテリアコーディネートサービスである。

どのあたりの仕事を想定しているかによって
イメージする価格帯も変わってくるのである。
『ココナラ』や『ハローインテリア』のようにインターネット上で価格が見えるサービスは
一般の人の意識の中に「相場」として記憶されやすい。
それが、世間の人が思う「インテリアコーディネート料はこれくらいだろう」に影響していく部分もあるように思う。

 

【フィーがわかりにくくなっている要因】

インテリアコーディネーターが働く環境はさまざまである。
インテリアショップ、家具販売店、カーテン屋などの専門店に所属している者、
工務店やハウスメーカーに所属している者、彼ら彼女らはほとんどの場合
「固定給」や「契約料」で仕事をしている。
施主・クライアントに対しては「インテリアコーディネート料」と称して
見積もりを提示することはなく、それらは物販や工事価格に含まれている。
そのため、一見するとコーディネートというサービスに対して
お金を払っているという感覚が施主・クライアントには生じない。

一方で、専門店や企業に属することなく活動しているフリーランスのインテリアコーディネーターは、
インテリアコーディネート料を明示している。

かたやゼロ円(に見える)コーディネート、かたや何十万というコーディネート。
ここに少なからず温度差がうまれ、あちらはゼロ円なのにこちらは金をとるのかという
ねじれが生じることもある。

また、ワンルームだけのインテリア相談と一軒まるごとの相談では
規模も内容も違うので、一概にいくらと事前に明示しにくく
多くのフリーランスのインテリアコーディネーターは
お問い合わせください、か要相談、といった表記をすることになり
それがさらにインテリアコーディネート料を見えにくくしている。

 

【集計結果/コーディネート料はいくらCASE1】

インテリアコーディネートの仕事をしている人に
以下の質問をした。

このような依頼が来た場合、
あなたのコーディネート料はいくらですか。
引き受ける場合はその金額、
引き受けない場合はその理由を教えてください。

|個人邸 マンション100㎡
|トータルコーディネート
|内装&家具 ご予算500万

 

集計結果がこちらである。

最も多かった回答は、30万から50万であった。
インテリアコーディネーターは、前述の通り様々な形態で働いている。
フリーランスで働くインテリアコーディネーターはコーディネート料を要求するが、
専門店や企業の所属するインテリアコーディネーターは、
工事の受注や物販を伴うのが大前提なので見積もりの中に含めてしまっていることが多い。
そのため、「コーディネート料」としてクライアントには計上しないことがあり
フィーがゼロ、という回答が含まれてくる。

おのおのの勤務形態ごとに分けてみると以下の表のようになる。

また、アンケートの回答から経験年数が浅い者は10万円台を提示し、
経験が増えるごとに設定料金を改定し、
自らの価値を高めていっている様子が見受けられた。

最低ラインとして30万円のフィーを確保できない案件は引き受けないという意見もあり、
現実問題として「30万円」というのが
食べていける、商売としてやっていける、利益が確保できるフィー、としての
数字の目安のようにも思える。


【集計結果/コーディネート料はいくらCASE2】

条件を変えて、
同じくインテリアコーディネートの仕事をしている人に
以下の質問をした。

このような依頼が来た場合、
あなたのコーディネート料はいくらですか。
引き受ける場合はその金額、
引き受けない場合はその理由を教えてください。

|個人邸 ワンルーム30㎡
|トータルコーディネート
|内装&家具 ご予算50万

 

集計結果がこちらである。

予算も少なく、㎡数も少ない案件だ。
特筆するのは、CASE1と違い「その仕事は引き受けない」と回答する者が2割もいたということだ。
引き受けない主な理由としては、
・(その予算では)プロとしての仕上がりが担保できない
・利益が出ない
ということである。
コーディネート料を10万、あるいは15万、20万といただけるのであれば
引き受けますよというインテリアコーディネーターは存在している。
しかし、最初の質問の回答を見る限り、一般的に想像されているインテリアコーディネート料は
「5万から10万」くらいである。
50万円の予算に対して別途コーディネート料と称して10万も20万も請求されるのは
割高と感じるだろう。このあたりの予算感のクライアントとインテリアコーディネーターのマッチングは
容易ではないことがうかがえる。

インテリアは難しいものではない、気軽に問い合わせをもらいたい、そう思うインテリアコーディネーターは多いが
実際に仕事として受けるにはある程度のコーディネート料をもらわないと成り立たない。
価格面で「気楽に」相談できそうもないのが現実かもしれない。

 

【価格設定方法について】

コーディネート料はどのように設定しているのか。
計算方法について触れている回答を拾い出し、集計した。

「広さ」と「価格」が同率の回答となった。
それぞれの内容は以下の通り。

▼㎡や部屋数など「広さ」に準じてコーディネート料を決めているという回答

Aさんの回答
1,000/㎡で計算しています。
30㎡なら30,000円、100㎡なら100,000円

Bさんの回答
100㎡までは150,000円、70㎡以下は100,000円です。

Cさんの回答
基本料金50,000+1,500/㎡です。
100㎡なら 50,000+150,000=200,000

Dさんの回答
5,000/㎡で計算しています。
100㎡なら500,000円

Eさんの回答
10㎡までは110,000、10㎡以上は165,000です。

Fさんの回答
基本料金50,000+2,000/㎡です。
100㎡なら50,000+200,000=250,000

▼予算や工事見積など「価格」に準じてコーディネート料を決めているという回答

Gさんの回答
請負金額の10%程度です。
500万なら500,000

Hさんの回答
予算の10%を希望します。

Iさんの回答
予算の10%です。

Jさんの回答
ハウスメーカー勤務なので個人へのフィーは発生してませんが
発注や納品管理として施主には手数料6%を計上しています。
500万なら300,000

Kさんの回答
基本30万+内装工事費の10%です。

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内容問わず一律、1案件いくら、という固定価格にしているのはごく少数で、
ほとんどの者は内容によってフィーを決めている。
部屋のボリューム感に合わせて計算をしている人は
最初の打ち合わせの段階で見積もりの提示が容易にできるのがメリットだろう。

工事見積額の何パーセント、という予算感に合わせて計算をしている人は
案件がフィックスしないとコーディネートフィーの確定が出来ないのがデメリットだ。
最悪の状況としては、さんざん打ち合わせをしたものの物件の成約に至らなかった場合に
コーディネート料を請求することが出来ず泣き寝入りしてしまうパターンが
あるということだ。
そのため、「基本料金」を設定して手付金をもらえるよう自衛し、リスク回避をしている者もいる。

 

また、「施主の顔色を見て決める」人もあった。
同じ予算感、規模感だとしても
この人は細かそうなお客様だ、打ち合わせが長引きそうだ、めんどくさい要望がありそうだ
・・・と判断したら、多めにコーディネート料を乗せておいたり、
性格のよさそうなお客様だとかリピーターの方なら利益度外視でもやってあげたくなるというような
「人情」ケースも。お互い、最初の顔合わせが重要になってくるということだろうか。

それから、こういったコーディネート料の他に、
提案したアイテムの売上の中にも利益を含ませて、
物販からの利益確保もしている場合が多い。
コーディネート料はあくまでも「基本作業代」にすぎず、
内装工事を絡めたりカーテンや照明や家具の売り上げをどれだけ上げられるかが
赤字か黒字かの分かれ道になると言えそうだ。

 

【コーディネートフィーに関する課題】

自由回答として、コーディネートフィーに関して
適正だと思うかどうかについてアンケートをとった。
そこから見えてくる課題について、一部抜粋して記載する。

▼企業内ICは内装費にコミコミにされていることが多く
自分のデザインにお金をもらっているという意識が高くない。
もっと貪欲にならないと、IC全体の価値をさげていくことになるのではないか。

▼個人で受ける仕事なら現場監理やリスクも含めあまり安く受けないようにしたい。

▼見積もりにコーディネート料と書いたら、コーディネートは依頼していないと言われたことがある。
デザイン料、監理費など、ほかの名称に置き換えて計上している現状。

▼設計料は納得してもらえるのに、コーディネート料の概念が施主にない。
ソフトに対してお金を払う文化が成立していない。

▼地域差があるように思う。

▼エンドユーザーからの依頼と、得意先や派遣会社といったBtoBとしての依頼では、
価格設定が違いわかりにくい。

 

【まとめ】

インテリアコーディネーターが、コーディネート料金を決める時。
自分で好きなように価格設定をすればいいと思う。
ただ、なんのガイドもないままだと基準や相場がわからず説得力がないだろう。

オンラインサロンの中での聞き取り調査ゆえ、サンプル数は少ないが
あながちこの結果は世間から大きくずれたものでもないと思う。

何かの参考になればうれしく思う。

今回の聞き取り調査で分かったことは、
世間的には5万から10万くらいなんじゃないかな?と思われているコーディネート料だが、
実際に第一線で働くインテリアコーディネーターたちは
30万くらいを目安に仕事を請け負っていることが多いということだ。

ちょっとした相談なら対面のインテリアコーディネーターに相談するほどでもなく
オンラインをつかった格安サービスを利用するのもアリだろう。
しっかりと家づくりの相談をしたければ
経験年数の浅いコーディネーターなら15万前後で請け負ってくれ、
自信のついたコーディネーターたちは30万、50万という価格帯で
その仕事を請け負ってくれるだろう。

そしてこれはあくまでも、目安だ。
我々の仕事にはもっと価値があると思うインテリアコーディネーターは
もっと金額をあげていくだろうし、
親しみをもってクライアントに寄り添いたと思うインテリアコーディネーターは
逆に価格をさげたっていいのだ。

どのようなニーズにこたえられる体制やスキルであるかを
インテリアコーディネーターは自らの活動内容を明示し、発信し、
クライアントに選んでもらえるようにしたらよいと思う。

 

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聞き取り調査に協力してくださったオンラインサロンメンバーの皆様に
感謝します。
集計した生データ(PDF資料)は
オンラインサロンメンバー限定にて配布いたします。

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

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