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【猫が30歳まで生きる日】の読感

2021.9.11 Sat.

先日、【猫が30歳まで生きる日】のあらすじっぽいことを
facebookに書いたんだけれど、
長文をせっかく書いたので・・・
ブログに流用してしまえという手抜き投稿です、はい。

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【治らない病気をなくしたい】

私たちは、
治らない病気といえば『癌』を思い浮かべる人も多いと思う。
ところが実際には『癌』は治らない病気ではなくなってきているそうだ。
本当にまだ治らない、治せない現代の病気は『腎臓病』や『アルツハイマー型認知症』などで、
そして、私たちが思っている以上に【治らない病気】の種類は多いという。

なぜこの病気になってしまうのだろう。

…原因が判明しない限り、
根本的な治療法には結びつかない。
例えば腎臓病患者がうけている人工透析は、
機能しなくなった腎臓の代わりに血液から老廃物を取り除いているだけだ。
つまり、症状の緩和や苦痛の除去に対応しているだけで、
病気そのものを治癒させているわけではない。

そういう【治せない病気】をなくしたいと考えた著者の宮崎医師が、
腎臓病と向き合ってきた副産物として、猫の寿命を伸ばせる発見に至った軌跡を記したのが
【猫が30歳まで生きる日】である。

いずれそんな未来がくるよねー、の話ではない。
うちのぽんず(1歳メス猫)も30歳まで生きることが出来るようになった、
目の前の現実の医療の話だ。

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宮崎医師たちは『AIM』を発見する。

AIM=アポトーシス インヒビター マクロファージ

『AIM』はタンパク質の一種で、
調べると牛や豚、マウス、人間、どの生き物の体内にもあるんだが、
なぜか猫だけAIMを持っていない。

ある日の講演会、
腎臓病を治すためには『AIM』が鍵となるのではないかという論文を披露した際、
会場の笑いをとるつもりで「ちなみに猫にはAIMがない」と軽くウンチクを挿入した。
何気なく話したことだったけど、
講演終了後、
たまたま聴講していた獣医師が駆け寄って
『猫にはAIMがないって本当ですか?』
と声をかけてきた。
そしてこういったのだ。

猫の寿命はだいたい15年くらいなんだが、
ほとんど100%、猫は腎臓病で死んでいくんですよ、と。

それを聞いて宮崎医師は大変驚いたそうだ。
腎臓病を治すにはAIMが関係してんじゃないかなーと予測していたところに、
AIMを持ってない猫は腎臓病で死ぬ運命だと聞かされたわけだ。

たまたま知り合った
人間のお医者さんと動物の獣医さん。
猫の腎臓病を治すプロジェクトを進めることになる。

————

専門家は、普通、
専門分野の中にしかテリトリーを持たず、
一般的には異専門と交わらない。
このように分野を超えた医者と獣医師が、ひょんなことから出会って共同で研究に向かういきさつは、
読んでいてじつに感慨深く、話に引き込まれてしまった。

宮崎医師は特定の学会に所属していない異端児だそうで、
その代わりに(代わりにではないかw)
ワイン会といった趣味的な社交の場によく顔を出すような人なんだけど、そういった場で、
のちに潤沢な資金援助をしてくれることになるパトロン(スポンサーとなるメガバンクのトップなど)と知り合うなど、支援者をつかみながら研究が進んでいく。

医療の先端の話が垣間見れる教養としての面白さと、
業界を超えて繋がっていくビジネス的な面白さ、
2つの柱で楽しめる本で、
なんだかとてもワクワクした。

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結論をざっくり言うと、
いよいよ『猫の腎臓病を治す薬』は
世に出せる直前にきている。

ちなみに『猫だけAIMがない』と思っていたのは実は間違いで、
【AIMはあるけど機能しないようストッパーがかかっている状態】が正しかった。
猫だけじゃなく猫科の動物(ライオンやチーターやヒョウ)がみんなそういうふうになっている。

※腎臓病で死んでしまうという大きなリスクを犯してまで、
なぜ猫科の動物だけが【AIMを機能させない】ような進化をしたのかは謎で
これから研究をすすめたいとのことだ

『猫の腎臓病を治す薬』は、
薬とは言ったが要はストッパーを解除し元々持っていたAIMが機能するように引き金をひくようなもの。副作用がないという治験結果も出ている。

ただ残念ながら昨年からのコロナウィルスで、
研究がストップ(足踏み)しているらしい。
(スポンサー企業、あしながおじさんたちのコロナ禍の業績低下で資金調達が滞っている)
(基金も持ち上がっているので個人で支援したい人は検索してみるといいと思う)

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猫の腎臓病は、治せるだけじゃなく、
予防も出来るという話に進んでいて、
サプリのようにキャットフードに取り入れる事でそれは実現するという。
2021年、ペットフードの企業と手を結んだそうだ。
いずれ店頭に『AIM活性化』というキーワードのついキャットフードが並ぶことになるだろう。

 

さて。

 

宮崎医師にとっては
猫の寿命を伸ばしたのはあくまでも
研究の寄り道に過ぎない。
【人間の、治らない病気】を減らすこと、
今日も研究し、奔走してくれている。

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というわけで以上、投稿が長くなりましたが、
専門的なところはナナメに読み飛ばしたとしても
読後感のいい希望に満ちたおもしろい本でした!と言う
ご紹介でした。

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