海を探しに行く物語

考えてみると
産まれてからずっと
海が近くにあったのだ。

そのことを、
とくに意識したことはない。

サーフィンやスキューバや
その他もろもろのマリンスポーツとは無縁の人生だったので
いつも海に入り浸っていたというようなことはないのだが

少し歩けばそこに、とか。
少し車を走らせればすぐに、とか。

海は、当たり前のように
「近くにあるもの」だった。

父は海上自衛隊のパイロットだった。
だからだよね、そりゃそうだ。
海上自衛官なのだから
海のあるところに住んでいて当たり前なのだ。

海のことなんか、
子どものときは
意識したことなどなかったのに

おとなになってからの私はというと・・・
いや、
ここ最近だ、

海の存在を意識するようになっている。

年を重ねるごとに
海を意識するようになっている。

(よりによって「海のない埼玉県」に住んでいるから
余計に意識するのかもしれませんwww)

リセットしたいとき。
心を洗いたい時。
反省したいとき。
勇気をだしたいとき。
深く感じたい時。
覚悟を決めたい時。

無になりたい時。
原点に戻りたい時。

自分の足元を確認したい時。

焦燥感に襲われている時。
寂寞に押しつぶされそうな時。

すべてすべてすべてを抱えていても
海に行くと

歩き出せるような気になる。

3月の真っ黒な海をみた。
坂の合間合間に。

 

行き止まりのない
どこまでも続いていく
坂の向こうの海に

ほんのすこし、
近づいた。